よいお年を  〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


待ち合わせたのは、日頃も通う 某学園最寄のJR駅前。
雪さえ舞い落ちてきそうな、そんな鋭い寒気の垂れ込める晩になったが、
不思議と、底冷えの辛さはあまり感じない。
そろそろ終電時間のはずだけど、今宵だけは別で、
朝まで夜通し列車が走ってるものだから、と。
周囲に似たような世代の人影が多いせいかも。
商店街の明かりも消えてないし、
通りを行き交う車の数もそれほど減らない。
急に冷えたからと、
母や乳母やが出かけるならどうしても履いてけと言い張ったので、
不本意ながら履いてきたレギンス、
実はちょっぴり感謝をしつつ。
コートの裾から申し訳程度に裾の覗いてるミニスカートのその下、
膝小僧を時々すり合わせつつの待ち合わせ。
ちょっぴり嵩のあるマフラーを巻きつけた衿元に、細い顎の先をうずめて。
時々携帯を手に取ると、着信を確かめたり…収録してある写真を見たり。
最近のはお友達とのスナップで、お茶目なポーズに頬を緩めたものの、
その先に潜ませてあった大事な隠し撮りに至ると、別な意味からお顔が緩む。

「相手が勘兵衛様だったなら、
 もうちょっと気張ったカッコにもなるのだけれど。」

「…なっ。」

「だって、デートなら気も張るから、
 少しくらい寒くたって感じやしないのだしvv」

「…ヘイさんっ!」

勝手にアフレコされたのへ、
照れ隠し半分、こらっと手を振り挙げれば。
肩越しにこちらの手元…愛しい壮年殿の写メ画像を
こそり覗き込んでた赤毛の少女があははと笑った。
アイボリーのニット帽はなんと五郎兵衛殿のお手製だそうで。
オニギリみたいなボンボンが、
丸ぁく形の良い頭の天辺、旋毛のところに留まってる。
ダッフルコート姿の彼女がからかったのを、
ついつい怒った金髪の美少女だったが、

 「イブの晩。」
 「な、なんですよぉ、久蔵殿まで。」

一緒に来たのか、いやいや、
そちらさんは歩道から離れてくリムジンで到着したらしい、
金の綿毛を微妙に掻き乱されてるお嬢さんが、
そんな自分の姿に頓着しないまま、意味深な一言言い出して。

 「シチによく似た子をQ街のラウンジで見かけたと。」
 「久蔵のところの家令夫人が仰せだったそうで。
  それがまた、浅野忠信に似た殿方と一緒だったそうだとか。」
 「あ…。//////」

まずは浅野忠信って誰だとメールで聞かれましてね、
いや最初はどういう意味から訊いてるのか判らなくて。
兵庫せんせえとはタイプも違うし、
一体どうされましたかと、
こっちからもあれこれ聞き返しちゃいまして…と。
にっこにこの笑顔で語る平八の傍ら、
久蔵はといや、うんうんと感慨深げに頷くばかりで。

  そしてそして…

ううう〜〜〜〜ッと、
色白なお顔を真っ赤にし、綺麗な拳を握り締め、
恥かしそうに唸ってる白百合様だったりし。

 「別にいつどこで誰とナニしてようと勝手ではありますが」
 「ヘイさんたらまたぁ〜〜〜。////」

からかう気満々じゃないかと七郎次が抗議をし、
それへと久蔵がかっくりこと小首を傾げる。

 「何故怒る?」
 「いえあの、怒ってなんか…。//////」

相思相愛、隠してもない間柄なのだろに。
そも、浅野何がしという
イマドキ話題の御仁に似ているイケメンに
手を引かれておったのだから、
嬉しがればいいのに、と。

 「…久蔵殿、棒読みな箇所が幾つかありましたが。」
 「仕方ありませんて。
  イマドキとかイケメンとか、初めて口にしたんでしょうし。」

それを吹き込んだのはどこのどどいつですかと、
再び腕を振り上げた七郎次を導きついで、ほれ久蔵殿もついといでと、
初詣予定のご近所の神社まで、
たったか軽快に駆け出した平八で。
街路樹には控えめなそれだが、
クリスマスからのライトアップだろイルミネーションが瞬いて。
誰かといるなら寒くはない夜の底、星々の代わりに見守っておいで。
口許から洩れる吐息を白くして、
軽やかな笑い声とともに駈けてく少女たちを、
もうすぐ来たる新年を待つ広場の大時計が、
新しい年の使者のよに、微笑ましいと見送っていた。



  〜Fine〜  2010.12.31.


  *さあ、UPは間に合うか!
   皆様も、どうかよいお年をお迎えくださいませvv

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